馬喰町にて

会社設立

馬喰町駅

事業をスタートさせてから1か月余り、時間がバタバタと音をたてて過ぎています。根っからのせっかちで短気な性格が、必要以上に時間を加速させているのかも知れません。

そんな慌ただしい日々の真ん中で、長い間お世話になっているOさんに、事業開始の報告をするため、津田沼駅からJR総武快速に乗り込みました。

電車が地下に潜って最初の駅「馬喰町」で下車し、階段を上って地上に出ると、道路沿いにはオフィスビルが立ち並んでいました。馬喰町駅はいつも通過するだけで、実際に降りるのは初めてです。問屋街の低い建物がひしめいている様子を思い浮かべていたので少し意外でしたが、馬喰町駅周辺は、喧噪から離れた静かで感じのいい街で、今度時間がある時に途中下車して、ゆっくり散歩でもしてみようと思います。

応接室にて

2年前まで、誰もが知る超大手企業J社の大幹部として重責を担い続けたOさんは、今、グループ会社の社長として、J社を支えています。

応接室に通されると、待つ間もなく、Oさんが小さな紙袋を隠すように持って、いつもの笑顔で入って来ました。ソファーに腰を下ろして、一通りの挨拶を終えると、Oさんはおもむろに紙袋から何かを取り出して、それを私に向かってかざすようにしました。

それは、以前私がこのブログで紹介した平尾誠二さんの本だったのです。「あなたのブログ見て、読んでみたくなったんです」と優しい笑顔でOさんは言いました。その言葉と仕草に、私の胸の奥の方に、熱いものが込み上げて来るのを感じました。そして、相手への気遣いと思いやりを、こんな風にして表現できるOさんの人間力に改めて敬意を感じたのです。

「縁」

かつて、極めて重要なビジネスの最終局面でOさんと相対した日の、痺れるような緊張感が蘇りました。そして同時に、今こうして、当時とは正反対の穏やかな空気が応接室に満ちているのを感じて、その落差になんだか可笑しくなりました。

人と人の関係性はこんな風にして変化していく事があるんだなと、ある感慨をもってOさんと、私の隣に座る愛弟子Hの表情をそれとはなく窺ってみましたが、そこには柔らかい笑顔があるだけでした。

Oさんと他愛もない談笑をしたその短い時間で、私はふつふつと活力が湧いてくるのを感じました。ビジネスで得た「縁」がビジネスを越えて、人と人を繋ぐことを実感し、そこにこそ、私が独立起業し、営業の現場に戻ろうとした、本質的な理由があったのだと感じたのです。

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