時間よ止まれ 矢沢永吉

趣味

ヨコハマ20歳前

去る2024年12月の週末、その人のライブに行くために、私はMちゃんと桜木町駅で待ち合わせました。その人、矢沢永吉が2024年ライブツアー「Fight ON」を横浜で締めくくるのです。永ちゃんのライブにMちゃんと連れ立っていくことが、随分前から年末恒例のイベントになっています。例年は武道館でこの日を迎えることが多いのですが、今年は初めて横浜ぴあアリーナでのライブ参加となりました。

横浜は二十歳前の永ちゃんが、故郷広島から東京に向かう鈍行電車を途中下車して、成り上がるための準備期間を過ごした町であることは有名なエピソードですが、その地で永ちゃんの歌声とパフォーマンスに包まれながら、いろいろあった2024年を締めくくれたことは、なんだか本当にサイコウでした。

ロッキンマイハート

久しぶりに会うMちゃんはソフト気味のリーゼントと革ジャン、私も白パンツと革ジャンでそれなりに決めて、白いスーツ姿のセンパイ達(矢沢永吉のライブには熱狂的なファンが永ちゃんを真似て白いスーツと白いハットでばっちり決めて参戦するのです。その多くが60歳を超えた先輩たちであることは言うまでもありません)の列にまぎれて、横浜ぴあアリーナに向かいました。毎年の事なのに、高鳴る鼓動は更に速さを増します。まさにロッキンマイハートです。

いつの日か

かつて、数えきれないほどの不良少年達が憧れた「YAZAWA」は、他の誰とも違う、独自独特の存在感を放ち続けてきました。そして、かつての不良少年たちは、今や青年時代、中年時代を乗り越え、初老期に入ろうとしています。永ちゃんは75歳ですから、不良少年達が初老の域に達しているのは当然と言えば、当然のことです。

自分自身もその域に踏み入れるようになって、彼があの頃から今に至るまで、「永ちゃん」そして「YAZAWA」であり続けているということに、あらためて強いリスペクトを感じます。それがどれ程に凄いことなのかを、この年になって身に染みて感じるようになりました。

そうであるからこそ、かつての不良少年達は、白いスーツと白いシルクハットを身に纏い、ステージに立つ75歳の永ちゃんと、あの頃憧れた若い永ちゃんを同一の憧れとして眩しく見上げ、彼の名前を声をからして叫び、そして、それが偶像ではなく、生身の人間矢沢永吉であることを十分理解した上で「あの頃」であろうとするのです。少なくともこの時間、この空間においては。

トラベリングバス

開演30分前、白スーツのセンパイたちによる「エーちゃんコール」が始まる頃です。Mちゃんと私は軽食コーナーで水分補給(永ちゃんのライブはアルコール禁止、飲酒しての入場も厳禁なので、本当の水です)を完了させ、席に戻ることにしました。予想通り、会場には永ちゃんコールが鳴り響いています。コールを扇動するセンパイ達とそれを止めようとする警備員との小競り合いも、いつもの風景です。

このツアーで永ちゃんは、昔の渋めのナンバーをセットリストに選びました。以前よりバラードが多くなったとはいえ、力強いマイクパフォーマンスも変わらず華麗でしたし、歌声は十分にエネルギッシュです。アンコールの「止まらないHa~Ha」からの「トラベリングバス」で、不良少年少女もその娘息子(もしかしたら孫?)達の喉を潰してYazawa2024年のステージは無事終演となりました。

チャイナタウン

「うまいビール飲んで帰ってね」と、いつものように永ちゃんが言ってくれたので、私たちは横浜チャイナタウンで餃子とビールをあおって帰ることにしました。

生ビール(プレモル)を飲みながら、私たちは、Mちゃんが65歳になる3年後、白スーツとハットを揃えて「エーちゃんコールをしよう」と誓いを立てました。3年後もきっと永ちゃんは変わらずYAZAWAであり続け、パワフルなステージを繰り広げているはずです。

「年をとるってのは細胞が老けることであって、魂が老けることではない」とYAZAWAは言っています。そうありたい、と私も思います。

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